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神戸地方裁判所 昭和55年(ワ)1477号 判決

原告

松田太一

右訴訟代理人弁護士

榊原正峰

清木尚芳

山田俊介

被告

エイアイユーインシュアランスカンパニー

(エイアイユー保険会社)

右代表者代表取締役

エルマーエヌディキンソンジュニア

日本における代表者

得平文雄

右訴訟代理人弁護士

辰野久夫

八代紀彦

佐伯照道

西垣立也

右訴訟復代理人弁護士

中島健仁

主文

一  被告は原告に対し、金二七六八万円とこれに対する昭和五三年八月五日から支払ずみまで年六分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求(主位的請求、第一次予備的請求及び第二次予備的請求)をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は三分し、その一を被告の、その二を原告の負担とする。

四  この判決は第一項に限り仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求める裁判

一  原告(請求の趣旨)

1  被告は原告に対し、

(一)(主位的請求) 金六一九一万四〇〇〇円とこれに対する昭和五三年八月五日から支払ずみまで年六分の割合による金員を支払え。

(二)(第一次予備的請求) 金五二七〇万円とこれに対する昭和五三年八月五日から支払ずみまで年六分の割合による金員を支払え。

(三)(第二次予備的請求) 金五二六八万円とこれに対する昭和五三年八月五日から支払ずみまで年六分の割合による金員を支払え。

(四)(第三次予備的請求) 金二七六八万円とこれに対する昭和五三年八月五日から支払ずみまで年六分の割合による金員を支払え(主文第一項と同旨)

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  被告(請求の趣旨に対する答弁)

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二  当事者の主張

一  原告(請求原因)

1  保険契約の締結

(一) 関西精密工業株式会社(以下「訴外会社」という。)は、昭和四七年八月ころ大阪国税局管内納税協会連合会の会員であり、原告は訴外会社の代表取締役であつた。

(二) 右連合会は、昭和四七年八月ころ、大同生命保険相互会社(以下「大同生命」という。)が生命保険を、被告会社が普通傷害保険をそれぞれ引受けてこれをセットにした「経営者大型総合保障制度」という保険をつくつた。

(三) 訴外会社は、右保険の申込みをなし、所定の手続を完了し、その結果、傷害保険については原告(被保険者)と被告会社(保険者)との間で傷害保険普通保険約款(乙第一号証。以下「旧約款」という。)に準拠して大略次の保険契約(以下「本件保険契約」という。)が締結された。

(1) 基本金額 五〇〇〇万円

(2) 死亡したとき 基本金額の全額

(3) 不具及び失明 被保険者が傷害を被りその結果として事故の日より一八〇日以内に次のいずれかの状態になつたときは、次の規定により保険金を支払う。

イ 両手もしくは両足の喪失または両眼の視力の喪失の場合 基本金額の全額

ロ 片手および片足の喪失の場合 基本金額の全額

ハ 片手または片足および一眼の視力の喪失の場合 基本金額の全額

(4) 廃疾 基本金額の半額

(5) 休業補償 一時的に仕事に従事できなくなつたとき一〇四週(七二八日間)一日につき一万円を支払う。

(6) 医療保障 医療、看護婦の雇用、入院を要したとき、五二週(三六四日)の間の実費一〇〇万円までを支払う。

(7) 保険期間 昭和四七年一一月一日より同五七年一一月一日まで一〇年間。

(四) 右保険契約は毎年自動更新され、昭和四九年一一月一日から同五〇年一〇月三一日までが旧約款による最後の契約期間であつた。

2  傷害保険普通保険約款の改正

昭和五〇年一〇月一五日から旧約款が改正され(改正後の新約款乙第二号証。以下「新約款」という。)保険金額は、次のとおり引上げられた。

(1) 死亡したとき 五〇〇〇万円

(2) 全ての日常生活の機能を失い、永久に仕事ができなくなつたとき(廃業保障) 五〇〇〇万円

(3) 休業補償 一時的に仕事に従事できなくなつたとき、七三〇日(二年)を限度として一日一万円を支払う。

(4) 医療保障 一〇〇万円

3  交通事故の発生等

原告は、昭和四九年一一月一五日、乗用車を運転し、神戸市兵庫区羽坂通二丁目一の四地先の交差点において、停止中のところ、訴外加藤広明運転の車両に追突され、後頭部打撲、頸部捻挫、腰部打撲の傷害を被つた。その後、治療を継続していたが、全く効果なく尿崩症の症状が発現し、すべての日常生活の機能を喪失し、完全に将来に向つて無能力の状態となつた。

4  原告は被告に対し、昭和五三年八月四日到達の書面で本件保険金の請求をした。

5  新約款増額調整

(一) 新約款の実施に伴い本件傷害保険につき別表(1)から(2)への保障額の引上げとともに保険料の約三・四六パーセントの引下げを行なつたところ、被告は保険料引下げと保障額引上げに伴う暫定措置としての保障額の増額調整(新約款増額調整)を行なつた。そして、被告は、傷害保険の保険料の引下げを昭和五〇年一〇月一五日から実施することを決定したところ、個々の契約者との間においては同日以降の最初の契約更新日から保険料の引下げを実施した。ところが、各契約者の契約月日は一致していないので、各契約者について現実の保険料の引下げ実施時期も異なることになつたが右保険料の引下げ実施時期とは関係なく、保障額は別表の(1)から(2)のとおり増額となる。そうすると、昭和五〇年一〇月一五日から昭和五一年一〇月一四日までの一年間は、高い旧保険料を支払う保険契約者と、改正後の安い保険料を支払う保険契約者が存在することになる。

(二) そこで、前者の不利益を修正するための暫定措置として高い保険料を支払つている契約者に対しては、別表(3)のとおり保障額を増額することになつた(以下「新約款増額調整」という。)。

(三) 適用期間

新約款増額調整は新規契約更新前一年間につき適用があるものというべきである。なぜなら、被告主張の如く右増額調整が全契約者につき一律に昭和五〇年一〇月一五日から各契約更新日までであるとすると、契約更新日の違いによつて契約者毎にその適用期間に長短が生じることになるが、本件保障制度のように、納税協会連合会が関与して団体、集団で募集した保険について、右のような被保険者に有利な規定の適用について不平等があつてはならず、新約款増額調整は各契約者につき同じ期間の適用をすべきであるからである。

(四) 原告の本件保険事故は、昭和四九年一一月一五日に発生したのであり、新約款増額調整適用期間内の事故であるから、新約款増額調整の規定が適用されるべきである。

このことは、昭和五〇年一〇月初旬ころ、被告会社担当者が原告の問合せに対し新約款増額調整の適用がある旨返答したこと、被告は昭和五〇年一〇月一六日原告に対し新約款増額調整による休業保障金一一二万円(一〇〇日分。一日あたり一万一二〇〇円)を支払い、その後も一日あたり金一万一二〇〇円の割合による休業保障金が支払われていることからも明らかである。

(五) 仮にそうでないとしても、被告の保険代理店である訴外中島啓(以下「中島」という。)は、昭和五〇年五月一〇日ころ、原告に対し、本件事故につき新約款増額調整の適用がある旨約した。

(六) 主位的請求のまとめ

以上のとおり、本件事故には新約款増額調整の規定の適用があるところ、原告は昭和四九年一一月一五日の事故後七三〇日以上休業し事故後三六五日以内に金三七八万三〇〇〇円以上の医療費を支出した。よつて、原告の被告に対する保険金は

(1) 廃業保障 五五五五万五〇〇〇円

(2) 休業保障 八一七万六〇〇〇円

(一日一万一二〇〇円の七三〇日分)

(3) 医療保障 三七八万三〇〇〇円

以上計金六七五一万四〇〇〇円となるが、原告は右のうち休業保障としてすでに五六〇万円を受領しているので、右受領額を差引いた金六一九一万四〇〇〇円の保険金を請求する権利を有する。

よつて、原告は被告に対し、右保険金六一九一万四〇〇〇円およびこれに対する保険請求の日の翌日である同年同月五日から支払ずみまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。

6(一)  仮に新約款増額調整による保障額の主張が認められないとしても、訴外会社と被告間の本件保険契約は昭和五三年九月まで継続していたのであり、そのころ原告は廃疾状態になつていたのであるから、原告は右時点における新約款に準拠した保険契約に基づく保険金給付を受けるべきである。右事実は前記中島が昭和五一年九月七日付書面により原告に対し、本件保険をさらに増額するようすすめ、右書面に同封された増額設計書によると、昭和五一年一一月一日現在の原告に対する保障額は死亡保障一億二六九二万三一〇〇円でありこの保障額の中には被告の廃疾保障金五〇〇〇万円を含んでいることからも明らかである。

(二)  仮にそうでないとしても、右中島は、昭和五〇年五月一〇日ころ、原告に対し、本件事故につき新約款の適用がある旨約した。

(三)  第一次予備的請求のまとめ

本件事故には新約款の適用があり、原告が被告に対して請求できる保険金は合計金五八三〇万円となるが、原告は右のうち休業保障金五六〇万円を受領しているので、これを右合計金から差引いた金五二七〇万円の保険金請求債権を有する。

よつて、原告は被告に対し、右保険金五二七〇万円およびこれに対する保険金請求の日の翌日である同年同月五日から支払ずみまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。

7(一)  仮に、原告の主位的請求、第一次予備的請求が認められないとしても、原告は旧約款にもとづき次のとおり保険金請求権を有する。

(二)  旧約款の解釈

昭和五〇年一〇月一四日以前における旧約款の保険金支払規約は別紙(一)「旧約款抄」記載のとおりであるところ、被告の旧約款は右時点における日本の損保各社の採用する約款と比べ被保険者にとつて著しく不利であつたため、行政指導により日本の損保各社と同一のものに改正されるに至つた。

旧約款と日本の損保各社の後遺障害保険金支払約款を対比してみると次のとおりである。〈編注・左表〉

後遺障害の程度

基本金額に対する支払率(パーセント)

旧 約 款

日本の各社

両眼の視力の喪失

一〇〇

一〇〇

両手もしくは両足の喪失

一〇〇

一〇〇

片手および片足の喪失

一〇〇

一〇〇

片手または片足および一眼の視力の喪失

一〇〇

一〇〇

片手または片足の喪失

五〇

六〇

一眼の視力の喪失

五〇

六〇

被保険者が完全にかつ永久的に

無能力状態にあるとき

五〇

一〇〇

同一事故により二種以上の後遺障害が生じた場合、旧約款によるとその中の最高額のみを支払うのに対し、日本の各社は各後遺障害の合計額を支払う。後遺障害の程度および支払金についてみると、旧約款は前記七つのケースのみで一〇〇パーセントあるいは五〇パーセントの支払しかないのに対し、日本の各社の場合は一〇項目に細分し、支払率も三パーセントから一〇〇パーセントまで一三種類に細分して定めている。

旧約款は右の比較のとおり被保険者に不利な内容となつており、ことに別紙(一)「旧約款抄」3条の廃疾条項(基本金額の五〇パーセントを支払う旨)はその不利益が著るしい。

従つて、本件の場合、本件事故による原告の後遺障害の状態は両足の機能を失い歩行できない状態なのであるから、別紙(一)「旧約款抄」2条(一)の「両足の喪失」と同視して右条項により基本金額全額(五〇〇〇万円)の保険金請求権が発生するものというべきであり、右の如く旧約款を解釈しなければ、右廃疾条項は無効というべきである。

(三)  そこで、原告は旧約款に基づき次のとおり保険金請求権を有する。

(1) 原告は、右記載のとおり、本件事故により両足の機能を完全に失い歩行できない状況になつており、右の状態は「両足の喪失」と同視しうるから、不具保障として前記旧約款の不具条項により原告は被告に対し、基本金額五〇〇〇万円の保険金を請求することができる。

(2) 休業保障

日額一万円とし、一〇四週(七二八日)以内総額七二八万円

(3) 医療保障 一〇〇万円

(四)  第二次予備的請求のまとめ

右休業保障と医療保障につき、被告は支払義務あることを認めており、休業保障の内金五六〇万円を原告に支払つている。

よつて、原告は被告に対し、不具保障五〇〇〇万円、休業保障一六八万円、医療保障一〇〇万円の合計金五二六八万円とこれに対する請求の日の翌日である同年同月五日から支払ずみまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。

8  第三次予備的請求

原告は旧約款にもとづく本件保険金として、次の金員の請求権を有する。

1 廃疾保障 二五〇〇万円

2 休業保障 七二八万円

但し、内金五六〇万円は支払ずみにつき残金一六八万円

3 医療保障 一〇〇万円

以上合計金 二七六八万円

よつて、原告は被告に対し、右保険金二七六八万円およびこれに対する請求の日の翌日である同年同月五日から支払ずみまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  被告(請求原因に対する認否)

1  請求原因1、2の各事実は認める。

2  同3の事実中、原告主張の交通事故が発生したことは認め、その余の事実は不知。

3  同4の事実は否認する。被告は昭和五四年一一月一五日到達の書面で原告代理人訴外財団法人納税協会連合会から後遺障害保険金の請求を受けた。

4(一)  同5(一)の事実は認める。

(二)  同5(二)・(三)の主張は争う。

本件保険の保険料引下げ並びに保障額引上げの改正は昭和五〇年一〇月一五日付をもつてなされたが、当時保険料の支払は毎月銀行からの自動振替の手続によつていた関係もあつて、保険料の引下げの実施は右同日以降の各契約更新日からなされた。従つて、被告としては右改正の日である昭和五〇年一〇月一五日から契約更新日の前日までは実質的には高い保険料の支払を受けることになるので、その期間を調整するために設けられたのがいわゆる新約款増額調整の措置である。このように新約款増額調整の趣旨が約款改正の日から契約更新日の前日までの間の実質保険料と現実の支払保険料との相違を調整することにある以上、その適用期間は右調整を要する期間である約款改正の日から契約更新日の前日までと解すべきことになる。これを原・被告間についてみると、その適用期間は昭和五〇年一〇月一五日から同年一〇月三一日までということになる。保険契約者としては、約款改正前は従来どおりの保障を受け、契約更新日以降は引下げられた低い保険料によつて改正保障額の保障を受けうるのであり、この間に保険契約者にとつて不利益な要素は何ら存しない。

(三)  同5(四)の事実は否認しその主張は争う。

被告会社から原告に対する休業補償金の支払は四週間単位で行なわれていたところ、休業補償金はそれぞれ日額一万円として、昭和五〇年一〇月一六日に一一二日分、同年一二月五日に五六日分、昭和五一年二月五日及び同年四月二八日に各一一二日分の支払がなされたものである。

(四)  同5(五)の事実中、中島が被告の代理店であることは認め、その余の事実は否認する。

代理店は、保険事故が発生した場合の損害査定や保険約款が改正された場合において適用されるべき約款を指定する権限を有しないから、この点に関する中島の発言は何ら被告を拘束するものではない。

(五)  同5(六)は争う。

5(一)  同6(一)の事実中、中島が原告に対し、甲第五号証の一、二の書面を送付したことは認め、その余の主張は争う。同6(二)の事実は否認する。同6(三)は争う。

(二)  普通保険約款の改正と既存契約

保険契約がいつたんその契約当時の普通保険約款によつて有効に締結された以上、その後に普通保険約款の改正が行なわれ、その改正が保険契約者に利益な場合でも、改正約款が既存契約に対して当然に適用されるものではない。ただ、(1)改正後に当事者間で改正約款による旨の合意がなされた場合(2)保険者が改正前の旧約款による権利を主張する利益を放棄した場合、(3)約款中に将来保険者によつて約款内容が変更される可能性を認める変更留保条項が存在する場合、あるいは、(4)改正約款が既存契約にも適用される旨の法律の規定が存在する場合等には例外的に改正約款が既存契約に適用されるが、本件においてはそのような例外事由はいずれも存しない。

被告会社は本件約款改正に伴い、乙第七号証の書面を保険契約者及び被保険者に送付することによつて、改正の内容とともに、新保険料は契約更新日から実施すること、改正の日である昭和五〇年一〇月一五日以降に発生する事故についても新約款を適用すること、同日以降契約更新日の前日(契約満期日)までに発生した事故についてはとくに増額する旨を通知し、右新約款増額調整の適用範囲をあきらかにしている。

保険金の支払は保険事故発生時の保険約款に基づいてなされるべきところ、以上のとおり、本件においては、本件保険事故発生日である昭和四九年一一月一五日当時の約款は改正前の旧約款である。

6  同7の事実中、旧約款の内容が別紙(一)「旧約款抄」記載のとおりであることは認め、その主張はすべて争う。

原告は原告の症状は本件事故当時適用されていた被告会社の旧約款第二条の「両足の喪失」に該当するものと主張するが旧約款第二条によれば、「喪失とは手または足に関しては手関節または足関節以上で完全に切断したことをいい」と規定されており、本件の場合、原告の手又は足は切断されておらず、いわゆる用廃に当たるものであるから、右原告の主張は失当である。

また、原告は被告の旧約款とその当時の日本の損保各社の約款とを比較し、その差異をもつて被保険者に著しく不利であると主張するが、そのような事実はないのみならず、そもそも原告が両約款に存する差異を問題とすることは保険といういわば一つの商品の個別性を無視した原告独自の見解というほかはない。

7  同8の事実は認める。

三  被告(抗弁)

被告は原告に対し、昭和五二年五月一一日、旧約款に基づく休業補償の残金一六八万円を同額の小切手を持参してその受領を求めたところ、原告はその受領を拒否するとともに同じころ被告が原告に交付した廃疾補償金に関する権利放棄書(甲第三四号証)に署名押印することを拒否することによつて、被告による旧約款に基づく廃疾保険金その他の保険金の支払の受領を明示的に拒否したものである。従つて、原告は昭和五二年五月一一日においてすでに受領遅滞に陥つているものであり、第二次及び第三次予備的請求についてはそれぞれその遅延損害金は発生しない。

四  原告(抗弁に対する認否)

抗弁事実中、被告が昭和五二年五月一一日ころ原告方に休業補償金一六八万円の小切手を持参したこと、原告がこれを受領しなかつたことは認める。

被告は右小切手と同時に「金一六八万円を受領することによつて本件事故に関し原告が被告に対して有する保険金請求権を完全に放棄する」旨の記載のある権利放棄書(甲第三一号証)を持参して、原告に対し、右権利放棄書に署名捺印を求め、これに署名すれば右小切手を支払う旨述べた。当時原告は廃疾補償金、医療補償金の給付をえていなかつたので右権利放棄書の署名押印を拒んだ。また、原告が右小切手金を受領するには裏書署名をせねばならないところ、右小切手の裏面には右裏書署名を兼ねる印刷文言として原告の昭和五一年四月二八日から同年九月一四日までの休業・治療費・医療保証金請求権を完全に放棄する旨の記載があつたので、右小切手の受領を拒絶した。

右のとおり、被告の右小切手による弁済の提供は①原告の他の保険金の権利放棄を強要するものであること②被告が支払うべき金額を下回るものであること③仮に被告主張のとおり、右一六八万円が昭和五一年四月二八日から同年九月一四日までの休業補償金であるとしても、休業補償金は遅くとも終期から一か月以内に支払われるべきものであるから、その間の法定利息の提供に欠けていることにおいて、いずれにしても債務の本旨に従つた弁済提供とはいえない。

第三  証拠〈省略〉

理由

一請求原因1(保険契約の締結)、同2(傷害保険普通保険約款の改正)の事実は、いずれも当事者間に争いがない。

二同3(交通事故の発生及びその後遺症)の事実中、原告主張の交通事故が発生した事実は当事者間に争いがない。そして、〈証拠〉によれば、原告は本件事故により後頭部打撲、頸部捻挫、腰部打撲の傷害を被つたこと、右後頭部打撲(脳底下面・下垂体損傷)による抗利尿ホルモンの分泌不全を原因として尿崩症の症状(口渇・多飲・多尿・不眠・不安)が発現したこと、同じく後頭部打撲を原因として、右上肢麻痺・両下肢機能不全・脊柱機能不全・歩行及び立位不能・座位持続不能・左顔面神経麻痺・頭痛・嘔気・めまい等の後遺症が存在すること、また右交通事故による視交叉損傷による両眼の視野狭少、平衡機能障害の後遺症が存在すること、後遺症の主たる症状は以上のとおりであつて、原告は終日仰臥・臥床の状態にあり、抗痙攣・抗利尿薬の継続的投与が不可欠で、日常生活において終身自用を弁ずることが不能であり、常時介護を要する状態となつたことが認められ、右認定に反する証拠はない。

三請求原因5(主位的請求)について

1  〈証拠〉によれば、昭和五〇年一〇月一五日別表(1)から(2)への保障額の引上げなどを主たる改正点とする旧約款から新約款への約款の改正がなされ、あわせて保険料率が引下げられたこと、右改正に際し、被告は改正の日である昭和五〇年一〇月一五日以降に発生する事故につき、既存契約者(旧約款に準拠して保険契約を締結した者)に対しても新約款に準拠して増額された新保険金を支払うこと、保険料の引下げは各契約者の各契約更新日から実施すること、その結果従前の高い保険料を支払い続けることになる昭和五〇年一〇月一五日から各契約更新日までの間に生じた事故については新旧の保険料金の比率により新約款による保険金にさらに増額調整した保険金(新約款増額調整による保険金)を支払うこととし、その旨保険契約者及び被保険者に通知したことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

2 本件保険契約が旧約款に準拠して当事者間で締結された以上、その後に約款の改正があつた本件の場合も新約款が契約当事者間に当然には適用されるものではないと解するのが契約理論の原則的な帰結であるが、本件においては、約款改正並びに保険料率の引下げがともに被保険者に有利なものであつたから、もし新約款が既存契約者に適用されないとすると既存契約者の犠牲において新規契約者が利益を受ける結果となり衡平の理念に反する状態を招くところ、被告は既存契約者に対する旧契款上の権利を放棄することによつて改正日以降の事故については新約款を既存契約者の有利に改正された部分に限り既存契約者に対しても適用することを承認したものと認められる。

そして保険料の引下げについては技術的な理由から各契約者の契約更新日から実施することとしたため、右改正日以降高い旧保険料を支払つている期間に発生した事故については、新約款増額調整を行うことにより高い保険料を支払つていることの不利益を調整したものと認められる。

3 右1、2のとおり、新約款増額調整の適用期間は昭和五〇年一〇月一五日から各契約更新日(本件の場合は同年同月三一日)までと認められる。

原告は新約款増額調整は新規契約更新前一年間につき適用がある旨主張するが、前認定のとおり、新約款は昭和五〇年一〇月一五日以降に発生した事故につき既存契約者には適用されることになつたものであるところ、その特例である新約款増額調整(同時になされた保険料の引下げ実施の遅延に伴う調整)が右期日より遡及して適用されることはありえないから、原告の右主張は理由がない。また、原告は、既払の休業補償金が新約款増額調整により支払われている旨主張するが、〈証拠〉によれば、本件休業補償保険金として、①昭和五〇年四月二四日金八四万円(昭和四九年一一月一六日から昭和五〇年二月七日まで一日金一万円の割合で計算した金員)、②同年八月二九日金八四万円(昭和五〇年二月八日から四月二日まで一日金一万円の割合で計算した金員。但し、右は三〇日の違算がある。)、③同年一〇月一六日金一一二万円(昭和五〇年四月三日から同年七月二三日まで一日一万円の割合で計算した金員)、④同年一二月五日金五六万円(昭和五〇年七月二四日から同年九月一七日まで一日金一万円の割合で計算した金員)、⑤昭和五一年二月五日金一一二万円(昭和五〇年九月一八日から昭和五一年一月六日まで一日一万円の割合で計算した金員。但し、右は一日の違算がある。)、⑥同年四月二八日金一一二万円(昭和五一年一月七日から同年四月二七日まで一日一万円の割合で計算した金員)の支払がそれぞれなされていることが認められ、原告は右③ないし⑥の支払金はいずれも新約款増額調整により一日金一万一二〇〇円の割合により計算された金員である旨主張し、前掲甲第六号証の三、五、六にはこれにそう記載があるが、原告本人尋問の結果によれば右記載は同人の指示により同人の妻が記載したものと認められる(原告は右は中島にその都度確認したうえで妻に記入させたものである旨供述するが、証人中島啓の証言と対比して措信できない。)から右主張を裏付けるに足りる資料とはならず、また、前掲甲第六号証の三には「新約款増額調整」なる文字が記名印により押印されていることが認められるが、証人酒井悦嗣の証言によれば、右は担当者の過誤により、右文字の押印された用紙を使用したものと認められるから、原告の右主張を裏付けるに足りる資料とはならず、さらに原告本人尋問の結果中右主張にそう部分は、小切手作成指示書である前掲乙第四号証の三ないし六に「一日一万円一一二日分」、「一日一万円五六日分」と明記されていることに照らし採用できないから、原告の右主張は理由がない。

また、〈証拠〉によれば、被告は原告に対し、右既払分を除く休業補償保険金の最終支払金として、昭和五二年四月ころ、いつたんは金一九八万円(従つて休業補償保険金の合計額は金七五八万円)の提供方を申入れた事実が認められるが、証人酒井悦嗣の証言によれば右は被告の担当者の過誤による計算ミスによりなされたものと認められるから、右事実をもつて新約款増額調整による休業補償保険金の給付を受けていたとする原告の主張は理由がない。

そして、請求原因5・(五)の事実については、原告本人尋問の結果中にはこれにそう部分があるが証人中島啓の証言と対比して採用できず、他に右事実を認めるに足りる証拠はない。

以上のとおり、新約款増額調整の適用を前提とする原告の主位的請求は理由がない。

四請求原因6(第一次予備的請求)について

1  原告は、昭和五三年九月ころ廃疾状態となつていたから、右当時の保険契約(新約款に準拠したもの)による保険金請求権を有する旨主張するが、保険金の支払は保険事故発生当時の保険契約に基づいてなされるものと解され、前記のとおり本件保険事故は昭和四九年一一月一五日に発生したものであるから、新約款の適用の余地はないものというべく、原告の右主張は理由がない。

2  請求原因6(二)の事実はこれを認めるに足りる証拠がない。

3  以上のとおり、原告の新約款に基づく保険金の請求(第一次予備的請求)はその余の点を判断するまでもなく理由がない。

五請求原因7(第二次予備的請求)について

1  旧約款上の不具・失明補償及び廃疾補償に関する規定が別紙(一)「旧約款抄」2条、3条記載のとおりであることは当事者間に争いがない。

2 前記二のとおり、原告は本件事故により右上肢麻痺、両下肢機能不全、脊柱機能不全等の後遺障害が残り、歩行及び立位不能、座位持続不能の状態にあることが認められるところ、原告は右状態は旧約款2条(一)の「両足の喪失」と同視しうるから同条項を適用すべきものと主張し、あわせて、このように解さないと、旧約款3条の廃疾条項は日本における他の保険各社の採用する約款に比べ著しく不利益な内容となるから無効となる旨主張する。

3 前記のとおり、旧約款2条には両足の喪失の場合は基本金額全額(五〇〇〇万円)の保険金を支払う旨規定され、かつ右「足の喪失」とは足関節以上で完全に切断したことをいう旨明記されているから、足の切断以外の事由による足の機能喪失をもつて右条項に該当する旨の解釈は、右条項の文理解釈上不可能である。そして、普通保険約款は多数の加入者を相手方として大量に締結される保険契約の性質上保険業者において保険契約の内容とするため予め主務官庁の認可を受けて定めるものであること(保険業法一条二項)、保険契約を締結する者はこれを除外する特約をなさないかぎりはその普通保険約款による意思で契約をするのが常態であること、主務官庁は普通保険約款につき保険者・被保険者の利益を比較衡量して審査をなしたうえその許否を決しその内容の合理性を担保しており、保険契約者も通常普通保険約款が合理的内容をもつものと信頼して契約すること、本件保険契約もそのようなものとして旧約款に準拠して締結されたこと等本件保険契約の特質並びに前記約款の文言が明確に手足の切断の場合に限つていることによれば、右文理解釈を離れて右条項を拡大解釈する余地はないものというべきである。

原告は当時他の保険会社が採用していた約款に比べ旧約款は被保険者にとつて著しく不利益な内容であつたと主張するが、まず、一般論として、個々の保険業者は普通保険約款を作成して主務官庁の認可を受け商品としての保険に種々の特徴を盛り込んで提供するものである以上、各保険の内容に差異があるのは当然であるものというべきである。そして、いずれも証人佐々木一憲の証言により真正に成立したものと認められる甲第一六号証及び乙第一四号証並びに同証言によれば、原告は本件保険契約と同時に大同生命との間で定期保険契約を締結したこと、右保険契約が準拠した普通保険約款(昭和四九年七月一日改正後のもの。乙第一四号証)の第九条(4)には、「両上肢又は両下肢の用を全く永久に失つたときは生命保険金と同額の廃疾給付金を支払う」旨の規定が存すること、大同生命は原告に対し、本件事故につき右条項に該当するものとして右廃疾保険金を支払つたことが認められ、右事実によれば、本件事故につき大同生命の場合には生命保険金と同額の保険金が支払われるのに対し、被告の場合は旧約款3条により基本金額(生命保険金額)の半額が支払われるにすぎないことが認められるけれども、保険は各保険業者と被保険者との間において個別に締結される保険契約によりその内容が定められるものであるから、準拠する約款の異なる他の保険会社の場合との比較を理由に旧約款の廃疾条項が被保険者にとつて著しく不利益なものであるから無効であるとか、旧約款2条の不具条項につき拡大解釈をして右不利益を救済すべきであるとする原告の主張は理由がない。

また、旧約款2条と3条を比較検討すると、別紙(一)「旧約款抄」2条(一)ないし(三)記載の両足の喪失等の状態(この場合には保険金として基本金額の全額が支給される。)と同等若しくはそれ以上に障害の程度がひどい廃疾状態であつても、右各場合に該当しないかぎりは旧約款3条により基本金額の半額の廃疾保険金が支給されるにすぎないことになるところ、そのこと自体は必ずしも合理性があるものとは言いがたい(現に前認定のとおり、昭和五〇年一〇月一五日の約款改正により新約款においては廃疾の場合の保険金額は基本金額の全額に引上げられている。)。しかしながら、被保険者にとつては後遺障害の程度に照応した保険金額の支払を受けられるものであることは望ましいけれども、保険料収入と保険金支払支出との原則的均衡を保つ必要その他健全な保険事業を遂行する必要上、支払対象並びに支払金額(本件にそくして言えば、いかなる後遺症にいかなる保険金を支払うか)に一定の制限を加えることはもとより止むをえないものであるから、主務官庁の許可をえた約款により支払対象及び支払金額に制限を加えた保険契約がなされた以上、その契約の範囲内で保険会社は保険金支払義務をおえば足りるものである。従つて新約款によれば本件の場合基本金額の全額が支給されることになる事実を考慮してもなお、旧約款3条の廃疾保険金が基本金額の半額とする部分は著しく不合理で無効であるとの原告の主張は採用できない。

4  以上のとおり、原告の第二次予備的請求は、原告の後遺障害につき旧約款2条の適用があるとする点で理由がない。

六請求原因8(第三次予備的請求)について

1  請求原因8の事実は当事者間に争いがない。従つて、被告は原告に対し、本件保険契約に基づく保険金として金二七六八万円を支払う義務がある。

2  そこで、右金員についての遅延損害金の発生の有無及び時期について検討する。

(一)  いずれも成立に争いのない甲第九(但し書き込み部分を除く。)、第一〇号証並びに原告本人尋問の結果によれば、原告は、昭和五三年八月四日被告に対し、交通事故証明書、診断書、診療報酬明細書、欠勤証明書、身体障害者手帳、印鑑証明書、住民票、戸籍謄本等(いずれも写し)の関係書類を送付し同時に本件保険金(廃疾補償金及び医療補償金)の請求をしたことが認められ(なお、前記のとおり、本件保険金中、休業補償金については右時点までにすでに内金が支払われていることが認められるから、少なくとも右昭和五三年八月四日までにその請求手続がなされたことは明らかである。)、右認定を覆すに足りる証拠はない。

(二)  そこで被告の抗弁について検討する。

抗弁事実中、被告が昭和五二年五月一一日ころ原告方に休業補償金一六八万円の小切手を持参したこと、原告がこれを受領しなかつたことは当事者間に争いがなく、右争いなき事実に〈証拠〉を総合すると、次の事実が認められる。

(1) 前記三・3認定のとおり、被告は原告に対し、本件保険契約に基づく休業補償保険金として、昭和五〇年四月二四日から昭和五一年四月二七日までの間、前後六回に分割して合計金五六〇万円を支払つた。

(2) 昭和五一年九月二四日、被告は原告に対し、休業補償金保険金の七回目の支払として、額面金一四〇万円の小切手を郵送し、原告はこれを受領したが、原告は新約款増額調整の適用を主張し、かつ右小切手の裏面には、「下記署名人は表記小切手代金を受領しました。よつて、貴社との保険契約(証券番号四B五二〇八七)に基づく保険事故に関する昭和五一年四月二八日より同年九月一四日までの休業・治療費用・医療保険金請求権を完全に放棄します」旨不動文字で記載されていたため、これを呈示すると残余の保険金請求権を失うことになるのではないかとの疑念を払拭できず、支払銀行に呈示して現金化しなかつた。

(3) 昭和五二年五月一一日ころ、被告の担当者は原告方を訪れ、休業補償保険金の最終支払金として、あらためて額面金一六八万円の小切手を持参し、要旨「本件保険事故に関し原告が被告に対して有する保険金請求権は休業補償金一六八万円を受領したことにより完全にこれを放棄します」なる文言の記載された権利放棄書と題する書面に原告において署名押印すればこれを交付する旨伝えたが、原告はその受領を拒絶した。

(4) その後再三にわたり被告の担当者は休業補償金につき原告において右権利放棄書に署名押印すればこれを支払う旨申入れたが、原告はこれを拒絶した。

(5) 遅くとも昭和五三年一一月ころまでに、被告は原告に対し、本件保険契約に基づく廃疾補償金として、前同様「保険金請求権は廃疾保険金二五〇〇万円を受領したことにより完全にこれを放棄します」旨記載のある権利放棄書の受領と引換えに金二五〇〇万円を支払う用意がある旨申入れたが、原告はこれに応じなかつた。

右事実を前提として検討するに、被告は原告に対し、休業補償保険金未払残金については現実の弁済提供を、廃疾補償保険金については口頭による弁済提供を行なつていることは認められるが、いずれも前認定の権利放棄書の受領と引換えに弁済する旨の留保付でなされていたものであるところ、被告としては原告に対し受取証書の交付を要求すること(民法四八六条)をこえて、前認定の如き権利放棄書の交付を要求する権利はないから、この点のみをもつて右各弁済の提供は債務の本旨に従つたものとは認められない。従つて、被告の抗弁は理由がない。

七結論

以上によれば、原告の本訴請求中、主位的請求、第一次予備的請求及び第二次予備的請求はいずれも理由がないからこれをいずれも棄却し、金二七六八万円とこれに対する履行期後である昭和五三年八月五日から支払ずみまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める第三次予備的請求(付帯請求を含む)はすべて理由があるから、これを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条を、仮執行宣言につき同法一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官杉森研二)

別紙

別表

保障額

保障の種類

(1)契約時の保障額

(2)50年10月15日

改正の保障額

(3)新約款増額調整

による保障額

休業保障

一〇四週(七二八日)を

限度として  一日当り

一万円

七三〇日を限度として

一日当り

一万円

七三〇日を限度として

一日当り

一万一二〇〇円

廃業保障

二五〇〇万円

五〇〇〇万円

五五五五万五〇〇〇円

医療保障

一〇〇万円

一〇〇万円

三七八万三〇〇〇円

別紙(一) 旧約款抄(昭和四三年七月一日認可、同日実施)

2条 不具及び失明

当会社は、被保険者が障害を被りその結果として事故の日より一八〇日以内に次のいずれかの状態になつたときは、次の規定により保険金を支払う。

(一) 両手もしくは両足の喪失または両眼の視力の喪失……基本金額(註・五〇〇〇万円。以下、同じ)の全額

(二) 両手および片足の喪失……基本金額の全額

(三) 片手または片足および一眼の視力の喪失……基本金額の全額

(四) 片手または片足の喪失……基本金額の半額

(五) 一眼の視力喪失……基本金額の半額

喪失とは、手または足に関しては、手関節または足関節以上で完全に切断したことをいい、視力に関しては、視力の完全かつ回復不能な喪失をいう。

3条 廃疾

当会社は、被保険者が傷害を被りその結果として事故の日より一八〇日以内に完全にかつ永久に無能力となり、いかなる職業にも従事できなくなつた場合において、その状態が一二か月間継続しその最終日において被保険者が完全にかつ永久的に無能力状態にあるときは、基本金額の五〇パーセントを支払う。

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